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スキマ時間に働く!働き方の構造改革

更新日:8月23日


メッシュウェル

今回のインタビューは、2018年7月に創業しアパレル業界の働き方の構造を変革させた株式会社メッシュウェルの窪田光平様。窪田様がどのような背景で創業に至ったのか、どのような行動や考えが、ターニングポイントとなったのか、本記事ではインタビューを通して見えてきた、創業秘話とサービスに込められた想いを解き明かす。


プロフィール:

新卒で丸紅に入社後、ベイクルーズに転じ、EC事業の拡大やカスタマーサポートセクションに携わった後、MBA取得のため渡米。帰国後MESHWellを立ち上げる。



目次:


 

まずはどんなサービスを展開されているのかを伺っていきます。



MESHWellのサービス内容について教えてください。

販売、接客のスキルを持った方と、スキルを持った人に来て欲しい小売店を繋ぐマッチングのプラットフォームを自社で開発、運営しています。


なぜ、アパレル業界に特化したサービスを始められたのでしょうか?

私含め、創業メンバーや事業に関わっているメンバーのほとんどがアパレル業界出身で、自分たちが働いていた時に実際目の当たりにしていた問題や課題を解決するために立ち上げました。


皆様が感じられた課題はどのようなものだったのですか?

全部で3つあって、お客様、小売店、そして最後は働き手の課題です。
まずはお客様の課題ですが、接客して欲しいのに接客されないというものでした。前職でカスタマーサポートの責任者をしていた時、お客様からのご意見の9割が「もっと接客して欲しい」というお声でした。僕も、 接客はしないで欲しい、という意見が多いのかと思っていましたが、実際は、「わざわざお店に来たのに誰も私に気づいてくれない」「忙しそうで話しかけられなかった」「せっかく見に行ったのに欲しいものがどこにあるのか聞けずに帰ってきた」とか、そういう声が多くて意外でした。
2つめの小売店の課題は、スタッフの数が足りていないことです。これがお客様の声を引き出してしまう根源に当たるのですが、平日の夜や土日など、一定の時間になると店内にいるスタッフ数よりお客さんの数が多くなってしまう現象が起こるんです。時短勤務のスタッフは16時くらいに帰ってしまい、お仕事帰りに買い物してストレスを発散するぞ!ってお客様が17時以降にたくさん来ていただいても、対応できるスタッフが少ないため、販売機会のロスが生まれてしまうんです。
3つめの課題は、小売店が働き手を見つけようと思っても”人が足りない時間だけ働ける人”って簡単には見つからないということです。実は僕自身も元々販売の仕事をしていて、それもあって周りに販売員の知人が多いです。ある時、結婚や出産を機にフルタイム勤務を辞めた元同僚に「販売の仕事に戻らないの?」と聞いたら怒られたんです。「販売の仕事はしたいけど募集条件は週5で40時間とか、働ける仕事を用意してくれないのは業界じゃないですか。用意してくれないからやりたくてもできない。」と言われました。
「じゃあいつなら働けるの?」と聞いたら、「子供が保育園に行っている時だけ」「転職したから夜の時間だけなら」そんな声が上がったので、『それなら働ける場所を俺が作るから!』 といって始まったのが(株)メッシュウェルの成り立ちです。
スキマ時間に働きたい人が働ける状態になって、お店側にとっても必要な時間にその働き手さんたちが来て、お客様が接客してほしい時にその人たちが接客する。これで一気に3つの問題が解決します。


 

次は創業までのストーリーについてお伺いしていきます。



どのようにサービスの立ち上げに至ったのでしょうか?

アメリカでの在学時に妻(現CCO伊藤様)とキッチンの壁に貼るタイプのホワイトボードにビジネスプランを書いたところから始まりました(笑)
冒頭でお話した日本のアパレル業界の課題は昔から掴んでいましたが、実は何も解決策がないまま妻とMBA取得のために渡米したんです。その当時にMESHWellのアイディアを思いつきました。


アメリカでどのような気づきがあったのですか?

当時は2017年頃だったのですが、アメリカではフリーランスとして働くミレニアム世代人が増えてきていました。「家族との時間をもっと取りたい」「自己成長のために時間とお金を投資したい」という思いから、時間に制約のある雇用された働き方ではなく、自分の専門性を生かしフリーランスとして複数の仕事を掛け持ちする「ギグワーク」の働き方をする人が増えている状況を目の当たりにしました。
一方、当時の日本ではそのような働き方をしているのはエンジニアくらいで、アパレルではその概念さえもありませんでした。この新しい働き方の概念を持ち込めば、ずっと感じていた日本のアパレル業界の課題も解決できるのかもしれないと思いました。


そこからどのようにサービスを立ち上げていったのですか?

だんだんと構想ができてきて、それならビジネスモデルまで固めてやろうと思い、壁に貼って使うホワイトボードに書き出していたんです。そしたらキッチンにいた妻が興味を持ってくれて、そこで壁打ちが始まりました。私自身、MESHWellが課題を解決できるという強い自信はあったのですが、新しい概念を持ち込んだ時に日本人は保守的なので「興味はあるけどよく分からないから怖い」と思われてしまうことが一つ懸念としてありました。
そこで、すでに妻は違う業界でフリーランスとして仕事をしていたので、その経験からからの観点を聞いたり、アパレル業界に馴染みのない人にも、メリットが伝わるように、分かりにくい部分や不安に感じられそうな部分を減らしていくための、壁打ちをしてサービスを作っていきました。

 


アイデアをどのようにプロダクトにしていったのでしょうか?

ビジネスモデルは固まったけど、システムをどうしようかと悩んでいた時に、前職の同僚の森(現メッシュウェルCTO)から偶然飲みの誘いのメールがありました。
僕は当時アメリカで、森は日本なので直接会うことはできなかったのですが、連絡をもらったついでに、ビジネスモデルの壁打ちをメールで始めました。飲みの誘いのメールだったのに、ビジネスの相談をメールで始めちゃったんですね。「こういうことをしたくて、そのサービスを作るのにどれくらいお金かかるかな」みたいな質問をしてみたら、「詳しく聞かせて欲しい」と森が言うので、後日ビデオチャットで1時間くらい説明したら興味を持ってくれました。


 帰国後はすぐにMESHWellを立ち上げたのですか?

いいえ、まずは前職の社内新規事業アイデアとしてプレゼンをしました。本気で事業化する姿勢を見せないと、プレゼンは通らないと考えていたので、実はベータ版の開発を進めた上で、「アメリカではフリーランスの働き方が浸透していて、日本もこれから人手不足で大変になるから、社員と派遣社員に加えて、フリーランスという3つめの働き手が増えると、業界にとってとても助かることになる!」と伝えましたが、採用に至りませんでした。そのため、会社を辞めて起業することにしました。


新しい働き方が理解されなかったことで当時感じた思いを教えていただけますか?

このままでいいのか?みたいな焦燥感がありました。アパレル業界にはレガシーな側面もあって、なかなか新しい手法や概念が広がるのも遅い傾向にあります。なので、新しい雇用のあり方を提案しても伝わらないかもしれない、という心配は元から少し抱いていました。


ご自身のブランドを立ち上げたりするのではなく、業界そのものの構造や雇用の仕組みに切り込んでいったのには、どういった背景があったのでしょうか?

ブランドを作ること自体は今日にでも始められます。いつでもできるという自信と経験もあります。一方で、それが自分の一番強い部分じゃないっていうのも経験上分かっています。どちらかというと経営や課題を解決する所にやりがいや思い、そして自身の強みを感じていました。
自分の得意なことを活かそうと思うと、長年解決されてこなかった業界の構造や課題を解決するということは自分がやらないと多分誰もやらないだろうなと思い、サービスを立ち上げました。

 

サービス立ち上げからの経緯を伺っていきます。



立ち上げ時のエピソードや苦労話があれば教えてください。

サービスをスタートしたものの「フリーランス販売員」という存在は日本にそもそも一人もいなかったので、やってくれる人を探してもなかなか見つかりませんでした。そしたら妻が「私がやってみる!」といって、最初のフリーランス販売員になってくれて。妻が一人目としてお店に入って販売員として働いた結果、あっという間に売り上げを叩き出して帰ってきて、「このサービスはお客様もストアにも貢献できる。たくさんお買い物をしていただいて私も楽しかった。」とサラッと言っていました。
お店の方々も、フリーランス販売員という存在を初めて見たので、何それ?という雰囲気でしたが、あっという間にお客さんの心に入っていく姿を目の当たりにして、 どういうこと!?と驚かれていました。


奥様の成功体験があってから、その後どのようにサービスが広がっていったのでしょうか?

最初は店舗側からサービス料を頂かず、新しい取り組みの結果を一緒に検証するために協力してください、というテストマーケティングのような形でスタート切りました。そんな中、渋谷のTRUNK HOTELで2週間POP-UPを行うので販売員を手配できないか、というお話をいただき、引き受けたのが最初の仕事です。
お店側も働き手側も双方が初めてで不安があったので、僕と森は2週間ほぼ毎日、TRUNK HOTELのロビーでコーヒーを1杯だけ頼んで、何かあった時にいつでも対応できるように終日そこに居座っていました(笑)そこでのお仕事が無事に終わって、なんとなく手応えが掴めてきたので、大手のお店に営業をしに行きました。当時は無謀にも販売員の登録者数が10人に満たないにもかかわらず、全国何百店舗もあるお店に営業しに行っちゃっていたんですよ。
ある時に大手のセレクトショップさんからお引き合いをいただき、マッチングが成立した販売未経験の元CAの働き手さんが、その日入荷したばかりの15万円もするコートを2枚売った事で喜びのお電話をいただいたんですね。それをきっかけに、他のお店でもどんどん広げていっていただけるようになりました。


サービスを取り巻く市場の状況について教えてください。

コロナが明けてから、消費者のリベンジ消費が盛り上がってきており、市場の状況としては追い風です。小売企業の売上がECからリアル店舗に戻ってきている動きもあります。特に他の国と比べて日本の消費者は実店舗で買い物をする文化が根付いています。店頭で買い物する方が試着もできるし、販売員からアドバイスをもらえるし、いろいろ便利なんです。
さらに海外からの旅行客もまた増えてきており、最近は語学が堪能な販売員さんに対しての依頼がすごく入ります。今後もインバウンド需要は増えていくので、我々のサービス成長の後押しになると思います。

 

ここからは少し視点を変えて、組織や働く社員の方にフォーカスを当てていきます。



現在の組織と今後のご採用方針について教えてください。

現在は10名の組織(うち女性4名)で、平均年齢は36歳です。今後は、引き続きプロダクト開発を進めていくのでエンジニアを募集しています。ただ、開発だけではなくて、マーケティングやビジネスディベロップメントもどんどん増やしたいなと思っています。また、登録ユーザー様の顧客体験を向上する、カスタマーサクセス機能の強化も行っていきたいです。


自社の働き方や制度についてはいかがでしょうか。

フレックス制やリモートワークを導入し、それぞれのライフスタイルに合った働き方を推奨しています。Slackなどのコミュニケーションツールも導入しており、チーム内でお互いにフィードバックをし、積極的に意見交換を行なっています。また、副業も推奨しております。
フレックス制を導入したことで、元アパレル業界で働いていた女性社員から「今までは帰宅が夜の10時を過ぎることが多く、旦那さんがカップラーメンを一人で食べていたのですが、今では私がご飯を作る時間ができたので、旦那さんが楽しみに待っていてくれるんです(笑)」という嬉しい声も届いています。


フレックス制度を導入した背景を教えてください。

創業時は僕と妻だけじゃなく、森にも2人子供がいて、ボードメンバー全員が子育て世代だったから、いわゆる9:00-17:00のように決まった8時間を続けて働くことはそもそも難しいし、僕たちらしくないなと思っていました。子供を朝送ってからや子供が寝た夜9時以降のような部分的な時間なら働けるので、「働ける時、働きたい時に働こうよ」という共通意識で、会社を起こした当時は制度としてはないものの実質フレックスのような形で働いていました。
ただ社員が増えてから、僕らは子供のお迎えで早く帰ったりするのに子供がいない社員は19時までオフィスにいるという差ができてしまい、制度として全社員に対しフレックス制を導入しました。


創業のきっかけ、MESHWellというサービスの提供価値、そして自社の社員さんに対しても「家族との時間を大事にする」という軸がおありなんですね。

はい。私自身も会社としても「ファミリーファースト」というのを最も重要な価値観の一つに置いています。これもやはりアメリカにいた時に触れた価値観が生きているからだと思います。
実はMESHWellのサービスの壁打ちを行っているタイミングでアメリカで娘が生まれ、日本に帰って子育てをしながら仕事を再開した時に、当時の日本企業の一般的な働き方では旦那さんが外で仕事をして奥さんが家で子供の面倒を見るという構図が出来上がっちゃうなと思ったんです。
一方、私が在学中に触れたアメリカの子育て文化は、例えば奥さんが授業参観に行くとか子供と遠足に行くとなると、「なんで俺に声かけてくんねえんだ、俺行きてえのに」って大体の旦那さんが言うんですよ。 要は父親にとって子育てというのは義務ではなく権利であり幸せの一つなんですね。
男性が子育てに参加したり、選択権を持つことは当然であるという「家族を大事にする価値観」に強く共感したので、これはそもそもサービスを立ち上げるきっかけにもなっていますし、自分たち自身も会社としてそういった働き方を実現しようと思いました。


 

最後に今後の展望について伺っていきます。



今後ますます成長されていくかと思いますが、そんな貴社の今後の展望を教えてください。

自分たちが見据えているのはアパレル業界以外の小売業界全般の企業、働き手の課題を解決したいと思っています。アパレル業界に強いメンバーがいたからこそ、ここまで広げられてきたと思うので今後はコスメやインテリアなど、他の業界の方たちにも参加してもらいながら、その方たちが持つ経験やノウハウを活かして、他業界にもサービスを広げていこうと考えています。
業界を広げていくという横の展開だけではなく、今すでに使ってくださっているクライアントさんにもっともっとサービスを使いこなしていただき、縦にも深耕していきたいと考えています。また、サービスの新たな提供価値についても可能性を模索しております。


新たな提供価値とはどんな構想を描いていらっしゃるのですか?

登録していただける働き手さんに対しても「スキマ時間に働ける」以外の価値も提供できる仕組みとして「フリーランスの方々のキャリア形成」を考えています。今すでに行っている取り組みとしては、登録している働き手を集めたオフラインイベント開催をしています。
MESHWellのサービスに登録している働き手はフリーランスという形態になり、サービスの中では他の登録者の情報は一切見えないように設計してなっているので皆様が孤独を感じやすいのでは?と思い、交流の場を設けています。オフラインで繋がりを創出するのはもちろんですが、今後はサービス上でもフリーランス販売員同士が情報交換したりできると良いと思っています。
これはあくまで構想段階ですが、例えばフリーランス販売で上手くいっている方が自身のスキルやノウハウを他のフリーランスさんに教材としてプレゼントしたり販売したり、働き手の中でも先輩後輩が教え学び合うような出会いが生まれる、空間を作りたいです。現在は働き手が働く場所を探すマッチングプラットフォームという立ち位置ですが、フリーランス販売員さんのキャリア形成のお手伝いができるエジュケーショナルプラットフォームのようなものに進化させていければとても面白いんじゃないかと思います。


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